夕暮れにはまだ早い真空の時間帯、“ころ”のテラスにて

夏の霧ヶ峰の午後5時。
高原から人がいなくなる。
ざわついた昼の空気が鎮まって落ち着いてゆく。
西に移動した太陽に照らされて、緑の草の海が金色に輝く。
昼間、湿原の草むらで蠢いていたニョロニョロたちも、潮が引くように一斉に身を潜めてしまった。

空はいぜん青い。それもくっきりした青。
静かだ。
時が止まってしまったかのような、この真空の時間帯が好きなのだ。
何も考えずぼーっとするのにもってこいだから。

誰もいないころぼっくるひゅってのテラス。
湯を沸かしてコーヒーでも入れようと思う。
鹿が湿原の沢筋に沿って走っていくのを見た。
高原は冷涼な空気に入れ替わる。

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